メインコンテンツにスキップt

ポジション・ステートメントの実践

環境・社会リスク評価ツール

当行は、取引先の事業と環境・社会リスク管理能力に関連する一連の質問で構成するセクター別リスク評価ツールを開発しました。この環境・社会リスク評価ツール(ESRAT)は、ホールセール・バンキングおよび中小企業(SME)バンキング事業 に関わるすべての営業・融資担当者に、取引先の環境・社会リスクおよび風評リスクを評価するためのツール―融通性に優れ、、かつ、簡易なツール―を提供することを目的に設計されたものです。このESRATにより、ある取引企業の業績を同業他社と比較して測定できるだけではなく、環境・社会リスクとガバナンスリスク、およびその周辺課題に対する取引先の管理能力について長期的視点から考察できます。

8つの主要分野で構成されるESRATは、該当する法令への遵守に関する取引先の実績、取引先の環境・社会管理システム、著名な業界団体への加盟状況、環境・社会リスクの管理に関するメディアとNGOの評価、そして温室効果ガス排出削減計画および戦略を考慮の対象としています。

こちらは、セクター別および汎用ESRATの概要です。

一般的なリスク

  • 環境的・社会的(E&S)な法的請求や訴訟
  • 環境・社会リスク、またはガバナンスリスクに関するメディアやNGOの否定的なレポート・報道
  • 報道を含む、E&S方針および実績に関する透明性

環境リスク2

  • 企業におけるESMS3の有無
  • 企業がESMSを実施する能力
  • 第三者に求められるESMS
  • 環境負荷軽減措置を含むE&S評価(該当する場合)
  • 該当する国際金融公社(IFC)基準に沿った環境パフォーマンス4
  • GHGの測定、開示、および目標
  • 気候変動リスクに対する戦略

社会的リスク5

  • 劣悪な労働慣習の証拠や告発
  • 傷害や事故の発生率を含む健康・安全面の実績
  • 影響を受ける地域コミュニティと苦情処理の仕組みに関する協議の証拠
  • コミュニティ元来の特性に対する影響

セクター別側面

これらは、当行のESRATがカバーするセクター別の質問例で、すべての質問を包括的に網羅したリストではありません。

評価対象分野   好ましい状況 好ましくない状況
石油および
天然ガス
  採取産業の透明性促進活動に参加している。 輸送および燃料補給活動にシングルハル・タンカーを使用している。
化石
燃料
発電
  精炭技術を利用している。  
鉱業および
金属
  キンバリー・プロセス認証制度下でダイヤモンドの採掘または取引を行っている。採取産業透明性イニシアティブに

参加している。
廃石処分による影響が軽減されていない。
林業
および
パーム油
  すべての事業についてHCVF6の評価を行っている。

FSCやRSPOといった7自主原則を採用している。
土地買収が違法、あるいは、(小自作農家および契約栽培農家を含む)対象コミュニティと限られた協議しか行っていない。

有害
物質の輸送
  有害物質の越境移動とその廃棄の規制に関するバーゼル条約に準拠している。 重油の運搬にシングルハルタンカーを使用している。
タバコ   国際タバコ栽培者協会原則を採用している。 密輸や未成年者への販売など、タバコ製品の違法取引が行われている。
船舶解体   グリーンパスポートなどの認定

を受けている。有害物質の越境移動とその廃棄の規制に関するバーゼル条約に準拠している。
アスベストを無許可で使用している。
バイオ燃料   IVM8やIPM9など、持続的なプランテーション管理慣習が守られている。 土地買収が違法、あるいは、(小自作農家および契約栽培農家を含む)対象コミュニティと限られた協議しか行っていない。
原子力
発電1
  IAEA10の安全基準に則って稼働している。 事件や事故の履歴がある。
ダム   世界ダム委員会(WCD)フレームワークに準拠して意志決定が行われている。  
1
原子力発電用ESRATの開発は現在進行中。取引企業は原子力発電に関するポジション・ステートメントを遵守し、この表の内容を反映したESRATを広く使用することが求められる。
2
環境アセスメントには、気候変動に関する当行のポジション・ステートメントに企業(または取引)が準拠しているかどうかの分析を含む。このポジション・ステートメント用の個別ESRATはない。
3
環境・社会リスク管理システム
4
IFC基準とは、パフォーマンス基準、総合健康安全ガイドライン、および産業別ガイドラインを表す。対応する産業別ガイドラインを持たない産業については、他のIFC基準が適用される。
5
社会アセスメントには、児童労働に関する当行のポジション・ステートメントに企業(または取引)が準拠しているかどうかの分析が含む。このポジション・ステートメント用の個別ESRATはない。
6
HCVF(保護価値の高い森林)とは、その生物多様性を理由に、世界的または地域的な重要性を有するかまたは提供している森林を指す。
7
FSCとは、責任ある林業管理を推進している国際的なネットワークを表し、RSPOとは、持続可能なパーム油を推進している国際組織を表す。
8
統合植生管理
9
統合害虫管理
10
IAEA(国際原子力機関)

当行のプロセスおよびシステムへの統合による社内規定の完全遵守

ポジション・ステートメントを当行のビジネス・プラクティスに組み入れるには、社内方針を変更する必要がありました。

新しいプロセスは、各種ホールセール・バンキング商品群に合わせて調整しました。たとえば、当行が期間20年のプロジェクト・ファイナンスをある取引先に提供するとしたら、当行の環境・社会基準に準拠し、その状況を継続するという取引先の目標について、融資期間を通じどの程度進歩したかを、これらのプロセスによって観察できるようになるということです。短期融資(つなぎ融資など)の場合、当行のプロセスは、取引先に対し当行の環境・社会基準を遵守するために必要な対策の実施を求めます。

取引企業を環境面・社会面から選別することは当行のプロセスにおいて不可欠な要素であり、これまで当行の自動化システムに組み入れられています。当行の顧客関係ツールは、取引先の環境的・社会的成果の記録など、全取引企業のプロフィールと関係履歴データベースを提供しています。これにより、当行と当該取引先との関係が存続する間は、その進捗状況を追跡することができます。当行の信用アプリケーション・システムも、確認・承認の電子記録を保持しており、これによって取引先信用度の継続的な見直しを確実に実施するとともに、上級管理職による取引先やプロジェクトに関わるリスクの把握、承認が可能となります。

取引先に背を向けるのではなく、協力し合うという当社の商業哲学

持続可能な金融サービス体制の確立を目指す組織として、当行は取引先への建設的な関与により、環境・社会の管理慣行に好影響をもたらすという取り組みを行っています。

取引先の中には親密に協力し合っても、自主基準を直ちにクリアできない企業が一部認められました。社会・環境リスクの管理方法に対する理解不足、確かな管理慣行の実践のためのリソース欠如がその理由です。また、取引先によって業績水準もさまざまであることが分かっています。その水準は、取引先が環境・社会ガバナンス慣行をどの程度採用しているか、これらの慣行が日々の管理手順の一部となっているかかどうか、そして長期的な経営計画に組み入れられているかどうか、といった条件によって変わってきます。

私たちは、取引先との建設的な対話を通じて、環境的・社会的配慮が持続可能な経済的・財務的成果を生むには不可欠であることを実証する必要があります。

持続可能な金融サービス体制の確立を目指す当行の姿勢に応えてもらうために、以下に示す3レベルのトレーニングを実施しています。

持続可能な貸付業務に関するEラーニング:ホールセール・バンキング、リレーションシップ・マネージャ、ポートフォリオ・マネージャ、各国の最高責任者、および上級管理職には、持続可能な貸付業務に関するトレーニングの受講が求められています。このEラーニング・モジュールは、環境・社会リスクに対する認識を高めることに重点を置いており、これらリスクが取引先および当行の業績に及ぼし得る影響を具体的に示します。また、土壌汚染や水質汚濁から、海面上昇や気候変動に至るまで、幅広い産業部門と実践的なトピックを網羅しています。

コア・クレジット・カリキュラム:ホールセール・バンキング事業に携わる当行の営業担当者(RM)と融資審査担当者全員は例外なくクレジット・トレーニングを修了する必要があります。環境・社会リスク管理がこのコースの構成要素であり、取引先に関わるリスクを特定するとともに、そのリスクを信用評価に組み入れる方法、ひいてはそのリスクを管理する方法を学ぶことができます。2010年より、当行のコーポレートファイナンス(法人向け金融サービス)業務担当者はこのコースの受講が義務付けられます。

E&Sトレーニングをベースとした啓蒙促進コース:プロジェクト・ファイナンス、M&Aアドバイザリー、引受業務を始めとする株式資本市場事業など、具体的な商品グループに合わせたトレーニングを現在開発中です。

持続可能な金融サービスに関するトレーニングを受けた従業員数1

  2005 2006 2007 2008 2009
従業員総数 2995 1500 2122 2011 3302
OCC部門の履修率         92%
リスク部門の履修率         96%
各国マネージャの履修率         52%
WBマネジメント・グループの履修率         100%
1
当行は現在、報告システムの改善により、報告数値についてさらに詳しい情報を提供できるようになりました。
ホールセール・バンキング担当ダイレクターの所見ホールセール・バンキング担当ダイレクターの所見

ケーススタディ:ホールセール・バンキング部門担当取締役の所見

石油・天然ガス部門はその持続性の面で本来的に課題を抱えているものの、当行および当行の市場にとって戦略的重要性の高い分野ですが、その大部分は炭化水素の大手メーカーと消費者で占められています。

ケーススタディ:

報告ツール

2009年度年次報告